木彫り熊をご購入いただきましたお客様に
こちらの手紙を添えて送らせていただいております。


木彫工房もくもっこり 手紙




命を考える日々



熊が目撃されたと、ときどきテレビのニュースになっている。

あの日捕獲された熊は

まだ恐怖を知らない子熊みたいに

鉄の檻の中で人懐こく、クリクリした瞳でカメラを見ていた。

そして、その熊は檻ごと車に積まれて山まで移動した後

撃ち殺された。

その昔、熊が民家を襲撃して皆殺しにした悲惨な事件があり

熊出没となればすぐさまハンターが出てくる。

熊は一度食べ物を得ることができた場所に再度訪れる性質があるため

発見したとなればみんな大騒ぎするのだ。

熊は大きい、その体重と鋭い爪を持って襲われれば

人間はひとたまりもないだろう。

恐ろしい熊、でも北海道と言えば熊なのだ。

五年前ふとした思い付きで、木彫りぐま講座にかようことになる。

一つの木の塊の中に熊が見えてくればしめたもので

私も習い始めて二年目にしてようやく

這い熊が彫れるようになった。

這い熊の次は口を開けた吠え熊、三年目になったころには

思うがままに好きな熊が彫れるようになり

教室から「卒業」という名目で放り出された。

「うちはド素人だけの教室だからね」

講師の先生に言われ、あぁ私は素人じゃないんだ

それじゃプロとしてこれからは彫っていこうじゃないかと決意した。

北海道のお土産の木彫り熊は

買って帰って邪魔になり

土産にして迷惑がられで散々な存在になっているが

それはサイズが大きいのと、木目だけ、あるいは黒か茶の地味なもの。

何とか愛されて喜ばれる木彫り熊を作りたいと考えた。(つづく)



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